民藝（みんげい）運動は、柳宗悦（やなぎ・むねよし）らが大正15年（1926年）に「日本民藝美術館設立趣意書」を発表したことがその端緒とされています。
　柳らは、手仕事により生み出された日用品に美術品としての地位を与え、緻密な理論を用いてそれまでの「美術」の領域を拡張しようとしました。この試みは当時の知識人の間で大きな反響を呼び、厳しい批判にさらされる一方で、全国各地に熱烈なフォロワーを生み出しました。
　丸山太郎（1909～1985）は、松本で工芸品店を営みつつ、自ら絵筆をとり、螺鈿細工もお手の物という多才で知られていました。民藝運動に深い共感を寄せた丸山は、その高い審美眼で蒐集した民芸品およそ6,000点をもって、昭和37年（1962年）、独力で「松本民芸館」を開館するに至ります。
　丸山の晩年に建物と土地、収蔵品の寄贈を受けた松本市は、その志を受け継ぎ、市立博物館の分館として「松本民芸館」を守り、丸山が愛した品々を公開しています。