コピーライター
後藤 麻衣子
岐阜出身・在住のコピーライター。1983年に長野県飯田市の病院で生まれる。2012年にフリーライターとして独立、2015年に工業デザイナーの夫とデザイン事務所「株式会社COMULA」をスタート。2020年に俳句専用文具ブランド「句具」を立ち上げる。名古屋芸術大学非常勤講師。趣味は俳句。
麻績村役場 村づくり推進課
三田 紘也さん
コピーライター
後藤 麻衣子
岐阜出身・在住のコピーライター。1983年に長野県飯田市の病院で生まれる。2012年にフリーライターとして独立、2015年に工業デザイナーの夫とデザイン事務所「株式会社COMULA」をスタート。2020年に俳句専用文具ブランド「句具」を立ち上げる。名古屋芸術大学非常勤講師。趣味は俳句。
02
episode

SPOT
かめとうさぎ

そもそも、移住を考え始めたのはいつ頃なんですか。
20代の前半くらいですかね。
都会での暮らしに不満があったわけではないですが、自分が望む暮らしに「都会」が必須でないことに気づいた、というか…。
なるほど。
あとは、「畑をやってみたい」というのはずっと思っていました。
自給自足生活への憧れを叶えるためには、やはり地方かな、と。
漠然と、「いつか都市部から抜け出して、どこかへ移住したい」と思うようになりました。
移住したいと考えはじめてからは、まずはどんなアクションを?
具体的にすぐに行動に移したわけではないですが、いろんなところに旅行して「ここ、なんかいいな」「こういうところが好きだな」というのを重ねていったという感じです。
それで、理想の地域は見つかったんですか?
もちろん、いいなと思える地域はたくさんありました。
ただ、実際は住んでみないとわからないですからね。
「移住したい」という気持ちはずっと持ち続けていたものの、「絶対にここ!」という地域は決まりませんでした。
それでも、いろいろな地域を見ることで、自分がどんなところに惹かれるのかは少しずつわかってきたような感じです。
その頃の三田さんにとって、信州地域のイメージって?
若いころにスキーやスノボでよく訪れていたので、信州は冬のイメージが強かったです。
訪れるたびに、アルプスの美しさにはいつも感動していました。
実際に住んでみて、冬以外の季節のイメージはいかがですか?
夏は、想像以上に過ごしやすかったです。
真夏でも暑くなるのは昼の数時間だけですし、朝や夕方は涼しくて心地いいんですよ。
猛暑日もありますが、都市部に比べれば少ない日数ですし、気温が高めの日でも湿度はそれほど高くないので、「湿度が低いとこんなに快適なのか!」というのは結構びっくりしました。
それでも、麻績に昔から住んでいる人はみんな口を揃えて「昔に比べたらかなり暑くなった」って言いますけどね。
避暑地の暮らし方ですね。羨ましい!
冬はどうですか?
容易に想像がつくと思いますが、冬はやはり寒いです。
雪もよく降りますしね。
初めての冬は、家の中で水が凍るほど寒くて、びっくりしました。
家の中で!?
今は空き家をお借りして住んでいるので、そんなに気密性もないですし。
真冬は室内でも、もこもこに着込んで暮らしています(笑)。
もちろん寒いですが、耐えられないほどではないですね。
それ以上に魅力的なところがたくさんあるので、移住をやめる理由には全然ならないくらいです。
そのあたりの感覚は人それぞれ違うので、やはり住んでみないとわからないなと思います。
生活していくうえでの、利便性の面ではどうでしょう?
こういう山裾の村って、多分みんな「店がない」みたいな、不便なイメージがあると思うんですよ。
なんとなく、そんなイメージがあります…。
長野県には77市町村、その中で村が35村あるんですが、麻績村は長野県で三番目に小さい村。
麻績ICやJR聖高原駅のある村の中心部に、店舗や施設がぎゅっと集まっていて、徒歩で移動できるくらいのエリアにコンビニもスーパーもあるので、日用品はそこで十分に揃います。
隣村に行けば、ドラッグストアもありますしね。
休日は、松本とか安曇野とか、まちの方まで出て買い物をすることもあります。市街地まで出れば、ショッピングモールでも飲食店でも、なんでもありますから。
僕らはそれを「下山する」って呼んでます(笑)。
下山!
三田さんはどこへ「下山」するんですか?
僕は安曇野が多いですね。
いつも千曲行く人もいますし、松本が好きな人も。あとは上田とかかな。
みんなそれぞれ、目的に合わせて下山します(笑)。
こちらに来てから、交友関係は広がりましたか?
移住者同士のつながりが自然とできて、ゆるいコミュニティが生まれています。
JR聖高原駅前にあるこのカフェ「畑+パンCAFE かめとうさぎ」さんも、僕よりも前に移住されてきた方が営んでいるお店です。
とってもかわいいお店ですね。
学校をイメージした店内で、小学校のときに使っていたような懐かしい机や椅子や、黒板なんかもあって。
いい雰囲気ですよね。
仲間と一緒にDIYでつくったお店だと聞いています。
三田さんのおすすめは?
くるみパンと、カレーパンがお気に入りです。
畑でとれた新鮮な野菜と、丁寧に育てられた酵母で焼くパンはすごくおいしくって。
かめとうさぎのパン(撮影:三田さん)
「かめとうさぎ」の店主さんとも、仲良しなんですか?
そうですね。
お互い移住者ということもあり、最初は移住者の方もたくさん参加されるお花見に呼んでもらったのがきっかけで知り合いました。
移住者同士のコミュニティがあるんですね。
コミュニティ…と呼ぶほどの固い集まりではないのですが、村の人も移住してきた人も、飲み仲間のような関係でみんなゆるくつながっています。
「今日飲むけど来る?」「行く行く!」みたいな感じで。
みなさんで一緒に飲むときは、どこに集まるんですか?
誰かの家にお邪魔することが多いです。
ほかにも、移住つながりで知り合った方もいるんですか。
麻績村に移住して小さなりんご農家を営む「はなうた家」さんとも仲良しです。
りんごはもちろん、ジュースもとてもおいしいんですよ。
村での新しいコミュニティが、どんどん広がっているんですね。
知り合いゼロの状態で移住してきましたが、村の人も、移住してきた人も、みなさん気にかけてくださって。
とても嬉しいですし、心強いです。
今の集落での生活についても、教えてください。
僕たちが住んでいる「野田沢」地区は、高齢の方が多い集落です。
少ないですが、小学生や中学生も数人います。
ご近所さんは、本当にとても親切な方ばかり。
今、新しく借りた土地の整備をしているんですが、それを見た近所の方が、自前のチェーンソーとか小さなユンボを持ってきて、作業を手伝ってくれたりするんですよ。
自前のユンボ!
そう。すごいですよね。
さっと来て、さっと手伝って、さっといなくなっちゃう。
なんかもう、すごいかっこよくないですか!?
かっこいい…。
あとは、季節の野菜が玄関の前に置いてあったりとかね。
私も岐阜の田舎育ちなのですごくわかります。
あれ、誰が持ってきてくれたか全然わからないんですよね。
そうなんですよ。
「これくれたの誰です!?」って近所に聞いて回って、判明したらお礼を伝えに行きます(笑)。
移住後の人付き合いについては、どう感じていますか?
とても心地良いですよ。
集落の集まりや、清掃活動には必ず参加しています。と言っても年に数回なので、全然負担にはなっていません。
これ、「おてんま」って言うんですよ、知ってます?
「おてんま」?
そう。
集落や地域のために、みんなで集まる作業のことを「おてんま」って言うみたいです。
僕もこっちに来てはじめて知った言葉でした。
どんなことをするんですか?
清掃活動をしたり、水路の管理や掃除をしたり。
作業はいつも賑やかですし、飲み会があったりもして、楽しいです。
いい距離感で、とても仲良くされてるんですね。
一般的な田舎暮らしの噂というか、必要以上に干渉されて困るとか、もしかしてそういう悩みもあったりするのかな?と思ってたんですが…。
今までそういうのに悩んだことは、全くないですね。
皆さんのやさしさや、集落全体での助け合いの精神、“お互い様”の気持ちに触れることで、僕自身とても穏やかな気持ちになりますし、いろいろよくしてもらっているので、僕らは僕らにできることをしたいなと、素直に思います。
三田さんも周囲のためにいろいろ動いているから、そうしたいい関係性が築けているんですね。納得です。